5.パオラの心配

水をあげるだけで、豊富にとれる野菜をていねいにランチやディナーにとりいれてるパオラの料理はチーズや卵でイタリアンなコクを追加しながら、野菜の新鮮さやおいしさもあじわえるような繊細さもあわせもちます。

さらに、その材料になるオーガニックの野菜たちをつくるのもパオラ。

おじいさん、おばあさん、おとうさんから受け継いだオーガニック野菜作りについての知識もタダモノではありません。


そんなパオラの心配は、オーガニック野菜づくりにこれまで蓄積した知識が通用しなくなったこと。


種をまくのにちょうどいい季節、のびた枝を刈り込む時期、収穫の時期までもめちゃくちゃになってしまったのです。


今年は異常気象で、日本やヨーロッパ、アメリカなど、世界中で気温がさがらない冬らしくない冬です。
もちろんイタリアもまったく寒くなくて、10月には、まだ海水浴する人たちがたくさんいたほど。

この冬らしくない冬のせいで、パオラのガーデンでもいろんな問題が起こっています。

たとえばキャベツ。

冬のキャベツは、「さむさ」のおかげでやわらかくてあまくおいしくなります。
ところがこんなにあたたかい日ばかりだと、かたくて繊維がごわごわしたにがいキャベツになってしまうそう。

春が来るまで寝ているようにみえるフルーツたちもパオラの心配の種。
たとえば、いちごやブドウ、ヘーゼルナッツなんかも、おいしい実をつけるためには冬の寒さが必要なのです。


オーガニックガーデンならではの問題もあります。

除草剤や農薬をつかわないオーガニック野菜や果物をそだてるパオラにとって、虫や雑草の心配がない冬は、しばしの気楽な時間。

それが冬になっても暖かい気候のせいで、パオラはいつまでも雑草との戦いを続けなければなりません。
いつもの冬ならとっくにいなくなっているはずのナメクジや虫がいつまでも元気に活動していて、パオラの野菜たちをたべてしまうので、虫たちが野菜に興味がなくなるように、灰やたばこ、ハーブで地味な虫対策も続けています。


そして、2006年のイタリアは、記録的に雨がふらなかったこともパオラのガーデンを苦しめました。

地球のパワー不足をとても心配しているパオラは、イタリアももっと地球のために規制をきびしくするべき、と話してくれました。

ちょっとぐらい不便でも、地球の環境を第一にかんがえるヨーロッパ人。
便利さばかりを追求する日本人・・・。
気候や自然との距離感が意識のちがいなのかもしれません。


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